リアルに侵食するネット

 異様に暑い日があったかと思うと、涼しすぎる日がいきなり訪れる。そんなそんな感じで夏になりきれていない6月。その初めの[みらいのデザイン]の特別講師はセミトランスペアレント・デザインSemitransparent Design™代表の田中良治さん。

ネットとリアルが連動する、独自のデザイン手法で様々なウェブ広告を手がけられて来た方だ。

 

 講義内では田中良治さんが関わられた様々なプロジェクト等を紹介いただいた。その中で一番印象に残ったものが、「ザ・コンテンポラリー3 Ghost in the Cell: 細胞の中の幽霊」という展覧会についてである。この金沢で行われた展覧会には、初めはポスターについてだけの参加の予定であったそうなのだが、最終的に“初音ミクの心臓”を展示したものの後ろの背景に映し出される画像ついても関わられたそうだ。

 個人的に、初音ミクという“仮想人格のDNA”を用いてその心臓を展示するバイオテクノロシーアートに惹かれたという部分もあるのだが、それ以上に田中良治さんのおっしゃられていた、

“ネットがリアル(現実)に侵食してくる”

という言葉に一番近いというか、この言葉の印象にぴったりと当てはなる感じがした。この展示の背景に映し出されていた画像にも、AIに初音ミクの画像を大量に覚えさせ、金沢の写真を初音ミクテイストに加工したものを使用していたらしい。この部分も、リアルとネットの境界をあやふやにしているような印象を受けた。

 

 

 

 また、講義内で

「市場調査であったりするようなデータに基づいたデザインというものはもちろん良い方向に進むこともある。しかし、そこからどうするかを考えることが必要である」

というようなニュアンスの、デザイン手法と言って良いのかわからないが、“理詰め”についてのお話があった。ネット上のインタビュー記事の中でも近い内容のことが書かれていたのだが、自分はこのデータに頼りきった“理詰め”というデザインに意識を持っていかれすぎていたように感じた。

 他の講義でも学んだことだが、デザイナーがどう思うかが大切だということを再認識することができた。データという大きな基礎を用意すし、その上に自分というデザイナーが表現したい要素を積み重ねて行くことで、本当の意味で良いデザインというものが完成するように思う。

 自分で言えば、人間工学をベースに自分自身の要素をプラスしてゆく、ということなのだろう。